そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

「やっと思い出したか?お前に関わったばかりに、こんな顔にされちまったんだ」


ジョーの言葉通り、彼の顔は私の記憶の中にあるジョーの顔とは程遠くまるで別人のようだった。


決して好みじゃなかったが、そこそこイケメンだったのに、今は見る影もなく残念な顔になっている。


二重だった目は腫れぼったく瞼が垂れ下がり、高かった鼻は陥没してペッタンコだ。


「それって、多摩雄のおっちゃんに顔面を膝蹴りされたから?」

「そうだ!!この顔になって以来、全く女にモテなくなった」


だろうね……


「もう生きててもしょうがない。で、俺は自殺を決意した。だがその前に俺の人生をメチャクチャにした小林鈴音に復讐しようと決めたんだ!」

「そんなの勝手に決めないでよー!!いい?膝蹴りしたのは多摩雄のおっちゃんで私じゃないし」

「うるさい!!アイツには敵わないから、取り合えずお前にしたんだ!!とにかく大人しく俺に刺されろ!」


なんじゃそりゃ?取り合えずで殺されたら堪んないよ~


私が納得いかない顔したのがイケなかったのか、ジョーが突然ワケの分かんないことを口走りナイフを振り回し始めた。


ジリジリと迫って来るジョーから私を守ろうとしてくれてる陸さんの表情が険しくなる。


―――と、その時……


「やめなさい!!」そう叫びジョーに掴み掛った人が居た。


それは、さっきまで暇そうにドアの前に立っていた警備員のおっちゃんだった。


さすが警備員!めっちゃカッコいい!と思ったのもつかの間、一瞬にしてジョーに床に倒され持っていた警棒まで奪われるという大失態を演じてくれた。


ちっとー!おっちゃん、頼むよ~……武器を与えてどーするの?

< 198 / 280 >

この作品をシェア

pagetop