そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
右手にナイフ、左手に警棒を持ったジョーが不気味な笑みを浮かべ私を凝視する。
あぁ~ダメだ……警備員のおっちゃん、床に倒れた拍子に頭を打って気絶しちゃった~。どうしよう……
「あっ!!そうだ!!」
私はあることを思い出し、慌ててバックからスマホを取り出す。
アレを使うのは今しかない!!そう確信し、スマホに向かって大声で叫んだ。
「お願い!助けてー!殺されるぅーっ」
それは多摩雄のおっちゃんが入れてくれた"どこでも助けに行っちゃうよアプリ"でもまさか、ホントにこれを使うことになるとは思わなかったな……
「陸さん、今、多摩雄のおっちゃんのアプリ使ったからもう大丈夫だよ」
陸さんを安心させようとそう言ったのに……
「アホか?そんなしょーもないアプリ使う前に警察に電話しろ!!」って、怒鳴られてしまった。
「あ……」
気が動転して警察という最大のお助け集団のことをすっかり忘れてた。確かにそっちの方が信頼できるし確実だ……
「ゴメン、直ぐ警察に電話するから……」
そう言うとジョーが「させるかー!」と怒鳴りながら襲い掛かってきたんだ。
咄嗟に私を突き飛ばした陸さんがジョーにタックルして凶器を持ってる両方の腕を掴み「鈴音、逃げろ!」と叫ぶ。
でも、私は陸さんが心配で、その場を離れられなかった。
「何やってる?早く逃げろ!」
「イヤ……陸さんを置いて逃げるなんて出来ない……」
不安と恐怖で涙が溢れ出す。
その時、揉み合う陸さんとジョーの後で、こちらをジッと見つめている人物が居ることに気付く。
「あれは……」