そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
「……ユウキ」
まるで愉快なショーでも見てるかのように嬉しそうに微笑んでいる。
あのヤロ~こんな非常事態にヘラヘラ笑いやがって……許せん!!でも今はユウキに関わってる暇などない。警察に電話しないと……
震える指で数字をタッチしようとした時、陸さんがジョーに足を払われ床に倒れて込こんでしまった。そしてジョーが振り下ろした警棒が陸さんの背中を直撃。
「うっ……」
その様子を目の当たりにした私の手からスマホが滑り落ちる……
「陸さん!!」
不利な体勢になりながら必死でジョーの足を掴み抵抗している陸さんを見て、私は危機感を覚えた。
このままじゃ、陸さんがジョーに刺されるのは時間の問題だ。なんとかしないと……
そう思った私はなりふり構わず叫んでいた。
「ジョー、何してんのよ!アンタが憎いのは私でしょ?」
ジョーが陸さんに向けていたナイフを下ろし、ゆっくり顔を上げ私を見る。
「そうさ、こんなヤツなんかに用はない。俺が憎いのは小林鈴音だ……」
「だったら陸さんの相手なんかしてないで、こっちに来なさいよ!」
ワザと挑発するようなことを言ってジョーを陸さんから引き離そうとした。
怖かった。死ぬほど怖かった。けど、陸さんを失うことの方がもっと怖い……
「鈴音!バカなこと言ってないで逃げろ!」
必死の形相で叫ぶ陸さんに首を振り、ジョー目掛けて走り出す。そして夢中で体当たりした。
でも……ジョーはビクともせず、私の方が床に転がる。
「ふふふ……覚悟しろ……小林鈴音」
真っ赤に充血した目を見開き、ジョーがナイフを持つ手を振り上げた―――