そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

倒れている陸さんの怪我の様子を冷静な表情で確認するイカれたおっちゃん。


「心配しなくていい。傷は深くないようだ。出血も少ないし命に別状はないだろう」

「ホント?」

「あぁ、脈もしっかりしてる」

「……良かった」


一気に体の力が抜け脱力状態。


そんな私の肩を力強く叩き微笑んだイカれたおっちゃんが突然立ち上がったと思ったら多摩雄のおっちゃんにボソッと呟く。


すると頷いた多摩雄のおっちゃんが近くに居た若い衆を呼び玄関の方を指差して何やら真剣な顔で耳打ちしたんだ。


「はい」と返事をした若い衆は玄関に向かって歩き出し、どういうワケかユウキに声を掛けた。


驚いた顔をしたユウキ。でも直ぐに若い衆と一緒にビルを出て行った。


どうしてユウキが若い衆に連れられて行ったのか疑問に思ったけど、入れ違いにビルに入ってきた救急隊員の方に私の意識が向く。


ストレッチャーに乗せられ運ばれて行く陸さん。


慌てて後を追おうとした時、イカれたおっちゃんに呼び止められた。


「話しがあります。彼の容態が落ち着いたら社長室に来て下さい」

「社長室って?」


キョトンとしてる私に、警視総監のおっちゃんが「ここ、大和商事の社長室ですよ」と教えてくれた。


「大和商事の……社長室って……えっ?ってことは、おっちゃん、まさか……」

「おや?ご存じなかったんですか?太一郎さんは大和商事の社長ですよ」

「えぇーっ!!存じません!存じません!全く存じません!」


イカれたおっちゃんがどっかの会社の社長だってことは知っていたけど、大和商事の社長だったなんて……知らなかった……


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