そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

慌てて時計を見ると……


えっ……午前10時?マ、マジ~!!寝過ごしたー!!


「うぎゃ~!!」


大声を張り上げ叫ぶと、目を覚ました多摩雄のおっちゃんが「攻めて来たのは、どこのどいつだぁー!!」って、懐から短刀を取り出し私の顔の前で振り回す。


「お、おっちゃん……危ない……」

「んっ?姫じゃないですか?まだ居たんですか?」

「もう!引き止めたのはおっちゃんじゃない!あぁ~どうしよう……こんな時間になっちゃったー」

「何か予定でも?」

「あ、いや……とにかく帰ります」


おっちゃんが喫茶店まで送ってくれるって言ったけど、それを丁重に断りお礼を言う。


「おっちゃん、今まで色々有難う」

「今まで?その言い方だと、まるで今生の別れみたいに聞こえますよ」

「な、何言っての~そんなワケないじゃない」


さすが鋭いな……おっちゃんには、ちゃんとお別れを言いたいが……今、それを言うことは出来ない。


「あ、姫、実はまた占ってもらいたいことがあるんです。後で喫茶店に伺いますので宜しくお願いします」

「う……ん。分かった」


笑顔でそう答えたけど、もうインチキ占い師は廃業だよ。ごめんね、おっちゃん……


心の中で何度も詫びながら事務所を出てタクシーを拾う。


取り合えずコロコロバックを買って島に帰る用意をしないと……モタモタしてたら陸さんが退院して来ちゃうよ。


なんとか渋滞に巻き込まれることなくセレクトショップに到着し、お目当てのコロコロバックをゲット!


急いで帰らなきゃとショップを飛び出したところで、こちらに向かって歩道を歩いてくる男性と目が合った。


「おわっ!鈴音ちゃんじゃない」

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