そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
それは、花束を抱えたビックワールドの社長だった。
「こんなとこで何してんですか?」
「何って、陸君のお見舞いだよ~鈴音ちゃんも陸君のとこに行くの?」
あぁ、そうか……この先に陸さんが入院してる病院があったんだ……
「いえ、私はちょっと他の用事で……」そこまで言い掛けてふと思う。
社長には本当のこと言ってもいいかも……一応、勤め先の社長だし、この人に言っても秘密結社の人に知られる心配はない。
それに今から陸さんのお見舞いに行くって言ってるし、事情を話して頼めば陸さんを引き止めてもらえるかもしれない。そうすれば時間が稼げる。
もちろん陸さんには私が島に帰るってことは秘密にしてもらって……
「社長、大切な話しがあるんですが……」
「うん、何?」
「実は―――」
私は今日、平島へ帰ることになったと社長に告げ、会社を辞めさせて欲しいとお願いした。そしてこのことはまだ誰にも言ってないから、陸さんにも秘密にしてと頭を下げる。
「ななな、なんで?どうして帰っちゃうの?」
動揺しまくりの社長が私の腕を掴みイヤイヤと首を振る。
「僕が仕事しないから怒ったの?だったらこれからはちゃんと真面目に仕事するから……島に帰るなんて言わないで~」
「社長……」
それはちょっとした驚きだった。嫌味ばっか言ってたから鬱陶しがられてると思ってたのに、こんなに悲しんでくれるなんて……
「"魅惑のおっぱい"も、もうすぐ発売になるのに……考え直してよ~」
「うん……でも、もう決めたことだから……」
ごめんね……社長。