そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

それから社長を説得するのに30分以上掛ってしまい予想外の時間ロス。


やっとこさ納得してくれた社長に、陸さんが退院する前に家を出たいから、なるべく彼を病院に引き止めておいて欲しいと頼み感謝の気持ちを込めてハグをした。


号泣しながら何度も振り返り手を振る社長を見送った私は急いで喫茶店に帰り、コロコロバックに荷物を押し込む。


よし!準備完了!なんとか間に合った。


後はユミちゃんに事情を話してお別れを言わなくちゃ……


気合いを入れユミちゃんの部屋をノックしたが―――「あれ?」返事がない。


ユミちゃん出掛けてるのかな……彼女には直接お礼が言いたかったのに……


ガックリ肩を落とし自分の部屋へ戻るとスマホが鳴り出した。


あっ、ユミちゃんだ!


「もしもし、ゆみちゃん、今どこ?」

『もぉ~鈴音っち、それはこっちのセリフだよ!朝早くからどこ行ってんの?』


あ、そうか……ユミちゃんは私が昨夜から居なかったの知らなかったんだ。


「すみません、ユミちゃんさんは今どこに居るんですか?」

『あたし?あたしはスーパーで買い物してる。陸君やチビちゃんのママも来るし、お昼ご飯にお寿司でもって思ってさぁ~

買い物が終わったら、そのまま保育園へチビちゃん迎えに行くつもり~。陸君も暫くチビちゃんの顔見てないから会いたいだろうしね』

「そうですか……えっと、実はユミちゃんさんに話しがあるんですが……」


島へ帰ると言おうとしたんだけど……


『ごめ~ん!早く買い物済ませないと陸君帰って来ちゃうから……帰ったらゆっくり聞くよ。じゃあね~』


あ……切れた……

< 250 / 280 >

この作品をシェア

pagetop