そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
病院で二人の会話を聞いてしまったんだと話し「愛莉さんが戻って来てくれて良かったね」と笑顔を作ると―――
陸さんは呆れ顔。
「鈴音は大きな勘違いをしてる。愛莉は俺のとこに戻って来たんじゃない。結婚の報告に来たんだよ」
「えっ?誰と誰の結婚?」
「愛莉と……今、愛莉が付き合ってるバツ1男との結婚の報告だ」
「ええーーっ!!そーなの?」
「相手の男に子供が居るけど、好きな男の子供だから頑張って育てていきたいってことだ」
―――愛莉さんは陸さんと別れた後、陸さんが浮気したのは自分にも責任があるんじゃないかと思うようになっていたそうだ。
お互い仕事が忙しく、仕事優先にして陸さんが会いたいと言っても断ってた自分も悪かったと……だからいつか陸さんに謝りたいという気持ちがあった。
そんな時、偶然新聞であの事件のことを知り、陸さんに会いに来た。
「ったく……勝手に誤解して勝手に出て行かれたら堪んねぇよ」
そうだったんだ……陸さんと愛莉さんは完全に終わってたんだ……
二人が無関係だということは分かった。でも、そんなことよりもっと大きな問題が残ってる。
「これで納得したか?納得したなら、もう島へ帰るなんて言うなよ」
「……その話しは納得出来たけど、やっぱり私は島へ帰ります」
「はぁ?なんで?」
私は意を決し、あの夏のことを陸さんに話した。そして私がい抱いた疑問も……
陸さんは神妙な顔で私の話しを聞いていた。
「確かにあの夏、俺は平島に行って鈴音と会っていた。そのことを黙っていたのは悪かったよ……」
素直に認めた陸さんが私に申し訳なさそうに視線を下げる。
「そのことはもういいの……私がショックだったのは、陸さんのお父さんが自動車事故で亡くなったってこと……私のお父さんも私が産まれる前に車の事故で死んでるの。
お母さんも病気で突然死してるし、一緒でしょ?」
「あぁ、その通りだ。けど、一緒じゃないんだ……」