そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
私の言葉がよほどショックだったのか……白目をむいて倒れ込むイケメン弁護士改めお兄ちゃん。
「悪いな宅磨、俺も鈴音を諦めるつもりはない」
「陸さん……」
「太一郎さんが許してくれたんだ。もう遠慮はしねぇぞ」
私の体を引き寄せた陸さんが勝ち誇ったように笑ったと思ったら、頬にチュッとキスをした。
「あぁ……」
陸さんったら、皆が居る前でチュウなんて……恥ずかしくて顔が熱くなる。
もう私と陸さんの間にはなんの障害もない。これからは堂々と誰に遠慮することなく付き合うことが出来るんだと幸せに浸っていたら、菜月ちゃんが浮かない顔でため息を付く。
「鈴音ちゃんとお兄さんが上手くいったのは良かったけど、おじいちゃんの件は失敗に終わったね……」
そうだった。こんなややこしい状態になったのは、トメキチじいちゃんとばあちゃんを会わせる為だったんだ。
「菜月ちゃん、まだ諦めないで。私、ばあちゃんを説得してみるから……」
「ホント?」
嬉しそうに笑う菜月ちゃんに向かって大きく頷き、バックの中からスマホを取り出す。
ばあちゃんは師匠の家に居るかもしれない。師匠に電話してみよう。
でも、呼び出し音が鳴るだけで誰も出ない。
「留守なのかな……?」
諦めて電話を切ろうとした時―――
―――カランカラン……
喫茶店の扉がゆっくり開く。
「鈴音はおるか~?」
まさか……この声は……「ば、ばあちゃん?」
開いた扉の向こうに立っていたのは、ここに居るはずのないばあちゃんだったんだ……
「なんや鈴音、元気そうやな?」
「う、うん、元気だけど……」
久しぶりの再会なのに、なぜかばあちゃんは不服そうな顔をする。
「チッ……ハズレたか……」