そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
あ……だから陸さんはイカれたおっちゃんとあまり話さなかったのか。おっちゃんに頼るのを嫌がってたのもそのせい?
「前に勤めていた会社を解雇になった時も、太一郎さんは陸を大和商事にって言ってくれたのに、自分は子会社でいいって、YAMATOに就職したのよ」
「でも、太一郎のおっちゃんは陸さんを嫌ってるようには見えなかったけど……どうして陸さんはそんな風に思ってたんだろう?」
「それはね……」
お母さんがカウンターの隅でスネて一人で飲んでるお兄ちゃんを指差す。
「宅磨がいけないのよ。事あるごとに、陸に『お前は源氏だから』って言ってたから……」
なぬっ?陸さんを苦しめてたのはお兄ちゃんだったの?
ムッとしてお兄ちゃんを睨むと、お母さんが慌てて首を振る。
「誤解しないで。宅磨は陸が憎かったんじゃない……羨ましかったのよ。妹が近くに居る陸が……」
「あ……」
私のこと、そんなに想ってくれてたなんて……お兄ちゃんも寂しかったの?
私はグラスとビール瓶を持ちお兄ちゃんの隣に座る。そしてお兄ちゃんのグラスにビールを注ぎなから「有難う」って呟きニッコリ笑った。
「鈴音……」
「弁護士先生が私のお兄ちゃんで良かった……」
それは偽りのない私の本当の気持ち。
一瞬、嬉しそうに微笑んだお兄ちゃんだったけど、私が言った次の一言で表情が曇る。
「私と陸さんのこと……許してくれる?」
お兄ちゃんのグラスを持つ手が止まり大きく息を吐く。
「私がどんなに反対しても無駄でしょ?鈴音は陸と結婚する……」
「う、うん……でも、出来ればお兄ちゃんにも祝福してもらって結婚したい」