そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
私が不安だったのは、陸さんとの結婚を反対されてることじゃなかった。結婚後のことが心配だったんだ。
「私と陸さんが結婚して、子供が出来た時、お兄ちゃんは私達の子供をチビちゃんみたいに可愛がってくれる?」
お兄ちゃんが驚いた顔をして目を見開く。
「源氏の血を引く子供じゃ可愛くない?」
するとお兄ちゃんはグラスのビールを飲み干しクスッと笑った。
「そんなことを心配していたのですか?」
「だって……」
「鈴音の子供なら可愛いに決まってるでしょ?チビ以上に可愛がりますよ」
「ホント?」
「えぇ、それに、源氏の血を引いているのは陸だけじゃない。菜月だってそうです。菜月の子供のチビだって……
私が鈴音と陸のことを反対していたのは、そんなことが理由じゃないのです。ただ、鈴音を陸に取られたくなかったから……」
その言葉を聞き安心したのと同時に、お兄ちゃんに申し訳ないと思ってしまう。
「ごめんね……お兄ちゃん」
「もういいですよ。いつまでもウジウジしてたらみっともないですからね。早く甥っ子が姪っ子の顔を見せて下さい。
もうすぐチビは居なくなるし、全力で鈴音の子供を可愛がりますよ」
「えっ?チビちゃんが居なくなるって……どういうこと?」
「チビは菜月とアメリカに行くんですよ」
そんな……チビちゃんがアメリカへ?
驚く私にお兄ちゃんがその理由を話し出す。
菜月ちゃんの旦那さんは菜月ちゃんと同じダンサーで、同じオーディションに合格し、ラスベガスでショーに出てるそうだ。
アメリカ行きが決まった時、チビちゃんはまだ産まれたばかり。不安でとても一緒に連れて行けなかった。だから陸さんに預かってもらってたらしい。
「でも、もう随分大きくなりましたからね、菜月はチビを迎えに来たのですよ。やっぱり親子は一緒に暮らすのが一番ですから」