そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
陸さんはスッキリしたかもしれないけど、私はなんか物足りなくて悶々。
「なんだその顔は?鈴音がそんな好きモンだとは思わなかった」
「ちょっとー!自分がヘナチョコなくせに、人を変態みたいに言わないで!」
「チッ……」
「あぁ~今、舌打ちしたでしょ?」
微妙に険悪なムード。私はスネて陸さんに背中を向けた。
ふん!何よ!私だってご無沙汰だったから、あんなことやこんなことシてもらえるのかな~って楽しみにしてたのに……期待ハズレだ!
すると陸さんが後ろで何やらゴソゴソし始めた。何やってんだろうと振り向くと……私の目の前で何かがキラリと光った。
「何?」
目を凝らして見てみると、ソレは小さなシルバーリング。
「ったく……22歳の誕生日なんだから機嫌直せよ」
「えっ……」
「12時過ぎたらすぐに渡そうと思ってたんだ。でもまさか、婚約指輪になるとは思わなかったけどな」
陸さんが少し照れた顔で笑う。
……私、自分の誕生日、すっかり忘れてた……
「ホントは退院した後に買いに行くつもりだったんだけど、お前の顔が早く見たかったから、前の日に病院を抜け出して買ってきたんだ」
「あああぁぁ……陸さん……」
だから陸さんは私に病院に来るなって言ったのか……このサプライズの為に……
まるでドラマみたいな展開。こんな場面を何度妄想して悶絶したことだろう……
薬指で輝く指輪を眺め改めて思う。
指輪って不思議だな……こんなに小さいのに、とっても大きな幸せを感じさせてくれる。
「これからは、ずっと一緒だね」
陸さんの胸に顔を埋め呟くと彼が変なことを言う。
「あぁ、三人で、ずーっと一緒だ」
「三人って……二人でしょ?」
陸さんたら何言ってるんだろうと彼の顔を見上げたら、陸さんの手が私のお腹にソッと触れる。
「ここに、もう一人居るから……」