そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

勿論、私に拒否権などない。言われるまま彼の後ろをトボトボついて行く。


弁護士なんてドラマの中の登場人物としか思ってなかった私にとって、目の前を歩いてる生弁護士は正に都会の象徴。何気にドキドキだ。


すると彼か振り返り「食事はもう済まされましたか?」って聞いてきたから首をブンブン横に振ると何か食べたいものはないかと言って優しく微笑んだんだ。


その爽やかな笑顔にドキッ!!


なんだ?この清涼感たっぷりの笑顔は?まるで憧れのトレンディードラマの一場面のよう。


あぁ……けど私は逮捕される。弁護士と罪人では身分が違い過ぎる。こんな形で出会ってなかったら大人の恋に発展してたかもしれないのに……残念無念。


そして、これがシャバで食べる最後の食事になるかもしれないと思うと切なくなり、せめて好きなモノを好きなだけ食べて悔いなく刑務所に入ろうと決意したんだ。


「じゃあ、最後に牛を……」

「最後に牛?」

「焼いてタレを付けて食べる牛でお願いします」

「あぁ……焼き肉のことですか?いいですよ。行きつけの店がありますから車にどうぞ」


そう言いながら路肩に止まっていた車の助手席のドアを開けるイケメン弁護士。チョコンと頭を下げ助手席に乗り込んだ瞬間、高級感溢れるフカフカのシートにビックリ!


島で漁師のおっちゃん達が乗ってた軽トラとはエラい違いだ。それに何やらいい香り……


クンクン匂いを嗅ぎながら隣の彼に目をやると、凛々しい横顔に再び心臓が高鳴る。


このアングル……トレンディードラマそのまんまだ!

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