そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
信じられない。信じられるワケがない。20年間死んだと思ってたお母さんがつい最近まで生きていたなんて……
呆然とする私に彼は「中を確認して下さい」と遺言書に視線を落とす。
慌てて封筒から中身を取り出しテーブルの上に広げると、そこには初めて目にするお母さん自筆の文字が……
《遺言書 私、小林琴音、巳年生まれ現在48歳が何らかの理由でこの世を去った時は、私の所有する財産を法定相続人であるの二人の子供に相続させる。
尚、自己所有の店舗兼自宅ビルに関しては、長女の小林鈴音に相続させることとし、他の財産については、兄妹話し合いにて均等に二分して相続することを望む。
平成26年3月1日 小林琴音》
「……二人の子供?」
更に私の頭を混乱させたのは、"兄妹"という記述。
「私にお兄ちゃんが居るの?」
「……はい。一週間前、お兄さんにもこの遺言書を確認して頂きました」
お母さんが生きていたことだけでも驚いたのに、お兄ちゃんまで居たなんて……正に青天の霹靂。
兄弟が居たらどんなにいいだろうとずっと思ってたから嬉しさはハンパなかった。
子供の頃、ばあちゃんに妹が弟を産んでくれと駄々をこね「産めるか!」と一喝され凄く悲しかったことを今でも鮮明に覚えてる。
「あの……お兄ちゃんに会わせて下さい!今からお兄ちゃんのとこに連れてって下さい!お願いします」
でも、イケメン弁護士は大きく息を吐きながら首を振る。
「それは……出来ません」