そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
まさか断られるとは思っていなかった私は困惑し、イケメン弁護士に詰め寄る。
「どうしてですか?この遺言書にも兄妹で話し合ってって書いてあるじゃないですか?会わなかったら話し合いも出来ない……」
「……そのことに関しては解決済みです」
「解決済みって、まだ何も……」
「お兄さんは遺産相続を放棄されました。
既に相続放棄申述書もお預かりしています。琴音さんの遺産は全て鈴音さんに相続してほしいということですから話し合いの必要はありません」
「……放棄」
違う……遺産とか、相続とか、そんな問題じゃない。今まで存在さえ知らなかった兄弟が居ると分かったら会いたいと思うのは当然のことじゃないの?
「なら、お兄ちゃんの住所を教えて下さい。自分で会いに行きます」
「申し訳ありません。それも出来ません」
余りにも淡々と答えるイケメン弁護士に怒りが込み上げてくる。
「なんで?どうして?この世でたった二人の兄弟なんですよ!お兄ちゃんだってきっと、私に会いたいって思ってくれてるはずです!!」
けど、彼は顔色一つ変えず残酷な言葉を口にする。
「全ての人が肉親に会いたいと思うとは限りません。
……お兄さんは鈴音さんと会うことを望んでいません。私が鈴音さんと会っても自分の連絡先は教えないでほしいということでした」
そんな……会いたくないなんて、なぜ?20年間、離れ離れになってた兄と妹なのに……
「理由は?……会いたくないっていう理由は?お願い……教えて!」