そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
「理由ですか……そうですね。このままでは鈴音さんも納得出来ないでしょうし……」
そう前置きしたイケメン弁護士が観念したように話し出す。
彼の話しによると、お母さんとお兄ちゃんは仲が悪く些細なことで喧嘩を繰り返していたそうだ。お兄ちゃんが大学を卒業すると家を出て何年も音信不通だったらしい。
お兄ちゃんは家を出た時、お母さんとは親子の縁を切ったつもりでいたから、お母さんの遺産を相続するつもりは全くないと突っぱねた。
「お二人の関係がここまでこじれていたとは、私も正直、驚きました」
お母さんとの確執があったのは分かった。でも、それがどうして妹の私と会いたくないということになるのかが分からない。
「でも、私とお母さんのことは無関係じゃないですか?」
「勿論、そうです。しかし彼はこう言ってました。
"妹が母親に似ていたら、憎い母親を思い出し冷静で居られる自信が無い。妹に辛く当たってしまいそうで怖い"と……」
「そんな……理由で?」
「鈴音さんにはそんなことでも、彼にとっては重要なことなんですよ。
確かに琴音さんは強引で頑固な方でしたからね。お兄さんも苦労されたんでしょう。
家を出る前は、精神を病んで通院していたと言ってました。
お兄さんが琴音さんを拒絶する気持ちは相当なモノです。どうか察してあげて下さい。」
そう言われたら会いたいという自分の気持ちを押し通すことが出来なかった。
「私は、お母さんに似てますか?」
複雑な思いでそう聞くと、イケメン弁護士が大きく頷き「とてもよく似てますね……」と一言。
「そうですか……」