そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
「分かりました。それでは早速、名義変更の手続きに掛ります。その他の遺産に関してもそのように……」
「でも……変な感じです。まだ実感が湧かなくて……お母さんって、どんな人だったんだろう……」
するとイケメン弁護士が何かを思い出したようにテーブルの上に紙袋を置く。
中から出てきたのは、真っ赤なバック。
「これは、琴音さんが普段使っていたバックです。琴音さんはいつもこれを肌身離さず持っていました。
以前、琴音さんが私に、この中には娘との唯一の思い出が入っているんだと教えてくれたことがあったので、お持ちしました」
「私との思い出?」
「はい。私はちょっと失礼してトイレに行って来ますので、ゆっくり中をご覧ください」
個室を出て行く彼を見送ると、私はドキドキしながらバックの中のモノを取り出しテーブルの上に並べる。特に変わったモノはない。ブランド物の長財布にハンカチにティッシュ……
「あ……」
目に止まったのは、古びたミニアルバム。手に取り開いてみると、産まれたばかりの赤ちゃんの写真が数枚貼り付けてあった。
もしかして、これって……私?
「……お母さん」
どんな理由があって、お母さんの元を離ればあちゃんに預けられたかは分からないけど、私のことを忘れず写真を大切に持っていてくれたことが何より嬉しかった。
きっと、何かそうしなければいけない理由があったんだ。そうだよね?お母さん。
でも、肝心のお母さんがどこにも写ってないのが残念でならない。
そうだ!免許証とかあれば……
慌てて財布を開け、免許証を探そうとした私の目に飛び込んできたのは、ナント!ギッシリ詰まった札束。
「何これ……全部一万円札だ……。いくらあるんだろう……」