そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
「店内には、琴音さんを慕っていた常連客が琴音さんの娘である鈴音さんにお会いしたいと集まっております」
「はぁ……」
「その中に、グレーのスーツを着た白髪の男性が居ます。彼に『最近、とてもいいことがありましたね?』と言って下さい。
それと、黒のスーツを着た額に傷がある強面の男性には『今度の満月までに帰って来る』と言って下さい」
「満月までに?誰が帰って来るんですか?」
「バーバラです」
「バ、バーバラって……誰?」
彼の言う助言が全く理解出来ず、頭の中は大混乱。
「ねぇ、バーバラって……」
しかし彼は私の質問には答えず喫茶店のドアを開け中に入って行く。
カランカラン……
小さな窓が一つあるだけの店内は薄暗く昭和の匂いがするどこか懐かしい雰囲気。しかし、そこに集っていたのは、目をギラつかせた中年男性達だった。
「皆さん、お待たせしました。この方が琴音さんの娘さんの鈴音さんです」
イケメン弁護士に紹介されペコリと頭を下げるが、シーンと静まり返り全員無言。
な、なんだ……このおっちゃん達、めっちゃ私のこと睨んでるんだけど……
すると、どこからともなく聞こえてきた「似てる……」という言葉と共に、どよめきと歓声が沸き起こり、店内は異様なムードに包まれた。
ひぃ~何がどうした?
ビビリまくってる私の前に現れたのは、グレーのスーツを着た白髪のおっちゃん。
このおっちゃん、イケメン弁護士が言ってた人だろうか?
取り合えず、言われた通り「最近、とてもいいことがありましたね?」と聞いてみた。