そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
「そして、我々の先祖は志を同じくする者が日本中どこに行っても分かるように同じ苗字を名乗ることにしたのです」
「それが……小林?」
「……そうです。でも……小林という苗字が日本にこんなに多い苗字だとは、ご先祖様も思わなかったんでしょうねぇ……」
なるほど。これで女人島説は完全に否定された。
「で、おっちゃん達はマジで平家の世を復活させる気でいるの?」
軽~い気持ちでそう聞いた私がバカだった。その一言でおっちゃん達の闘争心に火を点けてしまったようで、口々に源氏を倒せと大合唱。
てか、今は源氏の世じゃないでしょ?何百年前の話しをしてんの?
呆れてため息を付く私に、完全にスイッチが入ってしまった白髪のおっちゃんが声を大にして言う。
「ここに居る人達は、その分野では名の知れたスペシャリストばかりだ。代議士、医者、裁判官、警視総監など、全員の力を結集して、この日本を我々の手に取り戻すのです!
その為には、鈴音さん、あなたの力が必要なんです!」
ダメだこりゃ……完全にイカれてる。
いい年したおっちゃん達がガン首揃えてこんなおとぎ話を信じてるなんてどうかしてる。おまけに生首まで作って生まれ変わりとかワケ分かんない。とても相手してらんないよ!!
「弁護士先生、私、帰ります」
すっかりシラけてしまいドアに向かって歩き出すと、後ろから「姫!姫!」と連呼され余計ムカついてきた。
「いい加減にして!私は姫なんかじゃありません!」
怒りにまかせドアを力一杯開けようとした時、私より先に誰かが外からドアを開けたんだ。
開いたドアの向こうに立っていたのは、思いもよらぬ人物だった……