そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
ユミちゃんに教えられたのは、会社近くのホテルのラウンジ。相手の目印はスーツの胸ポケットに赤いバラを突き挿している人。
落ちついた雰囲気のラウンジをキョロキョロしながら進むと、隅っこの席にこの場の雰囲気に全くそぐわない男性を発見。
真っ白なスーツに身を包み胸に赤いバラを付けた30代くらいの金髪男。顔はまあまあだが、男のくせにやたらジャラジャラと光りモノをぶら下げ、指には金の指輪が輝いている。
「ゲッ!趣味悪ぅ~」
全く私の好みじゃないけど、せっかくユミちゃんが紹介してくれた人だ。少し話して様子を見るとするか……
彼に近づき「ユミちゃんさんのお知り合いの方ですよね?初めまして、小林鈴音。申年生まれの21歳です」とペコリと頭を下げた。
「やあ、鈴音さん、初めまして。浅野譲二(あさの じょうじ)です。僕のことはジョーと呼んで下さい」
長い前髪をかき上げ、ウインクをしながら投げキスをする自称ジョーとやらに鳥肌が立つ。
ウゲッ……めっちゃ、キモい。
それでも仕方なく椅子に座り一方的に喋る彼の話しに合わせ愛想笑いをしていたが、さすがに飽きてきて眠くなってきた。
必死で睡魔と闘っている私に、急にキモ男ジョーが前屈みになり小声で言う。
「何も心配いりませんよ。僕がリードしますから……」
「えっ?」
「このホテルの部屋を取ってあります。そろそろ行きましようか?」
鼻息荒く誘うジョーの顔が気持ち悪くて鳥肌を通り越し、全身が痒くなってきた……
ダメだ……いくらユミちゃんの紹介でも、生理的に無理!
顔を引きつらせ固まる私の腕をジョーが掴む。
「ひぃ~……」