そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

益々顔が引きつる白ポチャとヒョロ黒。すると隣の社長が私の肩をツンツンしながら申し訳なさそうに小声で言う。


「鈴音ちゃん、ここではイノシシもイノブタもうさぎも、あんなまり食べないんだよ」

「はぁ~?じゃあ、なんの肉を食べるんですか?」

「牛とか……豚とか…鶏かな」

「えぇーっ!!牛?マジですかー?」


豚や鶏は分かるが、牛なんて食べたことない。牛なんてありえない……そう思ったんだけど……


「何これ?めっちゃウマい!!」


自分で焼きながら食べるという斬新な食事方法にも驚いたが、牛肉を口の中に入れた瞬間広がるジューシーな肉汁と肉の柔らかさに度肝を抜かれた。今まで食べた中で一番美味しい肉だ。感動で涙が溢れる。


これが東京なんだ……やっぱり上京して良かった……あぁ~ばあちゃんにもこの牛を食べさせてやりたい。


「えっ?鈴音ちゃん、泣いてるの?」

「はい……恥ずかしながら泣いてます」

「そうかそうか、泣くほど美味しいなら、どんどん食べなさい」

「なんと!!いいんですか?」


社長って、なんて優しくて太っ腹な人なんだろう……やはりこの人は神だ。正真正銘、本物の神だ!どうか今までの私の暴言をお許し下さい。


心の中でソッと手を合わせ深く感謝する。


しかし…支払いが終わった後……


「思ったより高かったから割り勘ねー」

「割り勘ってなんですか?」そう聞く私に「皆で平等にお金を出し合うって事だよ~」と涼しい顔でサラッとぬかしたから目が点。


「大丈夫!鈴音ちゃんの分は給料から天引きしとくから~」


はぁ?それって、また借金が増えたって事?ありえない……やっぱりコイツは神じゃない!!さっきの絶賛の言葉は全て撤回だ!!

< 8 / 280 >

この作品をシェア

pagetop