そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
今更ながら、バカなことをしてしまったと反省しきり……
「はい……すみません」
「分かってもらえたようですね。安心しました。では、私はこれから事務所に戻らなくてはならないのでここで失礼します」
な~んだ……帰っちゃうのか……。
やっと気持ちが通じ合い両想いだと分かったんだもん。今から二人で愛のランデブーかも~?なんて思ったのに……残念。
走り去る車が見えなくなるまでブンブン手を振って見送り、軽やかな足取りで喫茶店に向かう。
「ただいま~」
喫茶店のドアを開けた瞬間、ユミちゃんが駆け寄って来て何度も頭を下げ謝ってくれた。
「そんなに謝らないで下さい。悪いのは私です。ユミちゃんさんにも迷惑掛けてごめんなさい」
「そう言ってもらえてホッとしたよー。でも、あの変態男からよく無事で逃げてこれたねー」
「あ、うん。まぁ……なんとか……」
強面のおっちゃんに助けてもらったということは、今はまだ秘密にしておこう。
「ご飯まだでしょ?オムライス作っといたから食べて。あたしお風呂入ってくるから~」
ユミちゃんが機嫌良く店から出て行き店内には私と陸さん二人っきりだ。
しかしこの喫茶店、超ヒマだなぁ~。一般のお客さんが居るのを見たことない。
「チビちゃんは?」
「ユミちゃんが飯食わせたらウトウトしだしたって……二階で寝てるよ」
「そう……」
あんな話しを聞いた後だからか?今まで無愛想でヤな男だと思ってた陸さんが、哀愁漂う可哀想な男に見えてきた。
陸さんの横顔を眺めながらオムライスを食べようとカウンターに座ると、彼がコーヒーを飲みながらボソッと呟く。
「……なぁ、お前があんなことしたのは、俺のせいか?」