そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
「じゃあ、鈴音ちゃん、また明日~」
店を出るとその場で解散。仕方ないから今日から住むマンションに向かうことにした。
「取り合えず、さっきの駅に行くか……」
駅員に目的地の住所が書いてあるメモを見せ、なんとか電車に乗り、そこから先は道行く人を片っ端から捉まえ道を聞きまくる。なんとかマンションの近くまで来た頃には既に辺りは薄暗くなっていた。
けど、それらしいマンションばかりで、どれが引っ越し先のマンションか分からない。仕方ないので前を歩いていたスーツ姿の男性に声を掛けてみた。
「あのぉ~……すみませーん」
「んっ?」
「ぬわーっ!!」
「あ……」
それは、さっきビックワールドで会った失礼極まりないあの男だった。
「おぉ、千人切りの性の伝道師じゃないか……また会ったな。で、なんの用だ?」
全く表情を変える事なく淡々と話す失礼男。あんまり関わりたくなかったがウロウロするのも疲れたし、失礼男を頼る事にした。
「このマンションの場所分かりますか?」
メモを見せると一瞬だが彼の眉がピクリと動き、すぐに私の後ろを指差したんだ。
「えっ?」
「お前の後ろのマンションがソレだよ」
振り返ると周りの建物よりひと際高くそびえ立つ真っ白なビルが目に飛び込んできた。
「これ?」
「さすが千人切りの性の伝道師だな。ここに住んでる金持ち男を食い物にしてるのか?」
「もう!その呼び方はやめて下さい!それに、ここは私の引っ越し先です」
「ほーっ……。その若さでこのマンションの住人か?よっぽど金持ってんだな」
「……?」