そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

そしてその夜、女性が私の家に来て、ばあちゃんと何やら深刻そうな顔でボソボソ話してた。


その内、二人は言い争いになり、女性は泣きながら帰って行った。帰り際、女性は私の頭を撫で「鈴音ちゃん、元気でね。またいつか会おうね……」そう言って……


でもそれ以来、その女性にも菜月ちゃんにも会ってない。


きっと、もう私のことなんか忘れてるだろうなぁー




「鈴音っち、黙り込んじゃって……どうかした?」


気付けばユミちゃんが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。


「あ、うぅん……なんでもないです」

「そう……で、島では誰と暮らしてたの?」


ばあちゃんと二人暮らしだったと答えると、ユミちゃんの表情が曇る。


「じゃあ、鈴音っちが居なくなって、ばあちゃん一人ぼっちになっちゃったんだ……寂しいだろうね?」


それを言われると辛い。胸がチクリと痛む。


「そうだ!鈴音っちのばあちゃんもここに呼んじゃえば?部屋はいっぱいあるんだし、皆で住んだら楽しいじゃん!」


ユミちゃんの意外な提案に少々驚いた。


「それは無理ですよ。ばあちゃんは島から出たことない人だし、東京なんて嫌だって言うに決まってますよ」

「そうかなぁ~一度聞いてみたら?」

「う、うん……」


一応、そう答えたけど、あのばあちゃんが島から出るなんてありえないこと。それは自信を持って断言出来る。


「で、鈴音っちはどうしてばあちゃんを一人島に残してまで東京に出て来る気になったの?」

「あぁ……それはですね~トレンディードラマに憧れて……素敵な彼氏をゲットしようと……」

「トレンディードラマ?何ソレ?」

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