そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
――――次の日の朝
さっきまでユミちゃんとあんな話しをしていたからだろう。チビちゃんにミルクを飲ませている陸さんが、なんだか凄くいい男に見える。
「なんだよ?人の顔ジロジロ見て」
「ジロジロなんて見てませんよ!チラッと見ただけです」
ユミちゃんが作ってくれた卵焼きをほうばりながら慌てて言い訳をし目を伏せる。
何?なんなの?……私、陸さんのこと意識しまくってない?それって、彼が予想外に優しい人だったから?
それとも……
陸さんとユミちゃんの間に恋愛感情がなく付き合ってないって分かったから?でも、それを知ったところでどうなるものでもない。それに私にはイケメン弁護士という微妙だけど両想いの彼が居る。
そうだ。浮気はダメだ!
「ユミちゃんさん、ごちそうさま~」
残っていたご飯を口に押し込みバックを持って立ち上がるが、知らず知らずの内に私の目は再びチビちゃんを見つめる陸さんの穏やかな瞳に釘付けになっていた。
顔を上げた陸さんとまた目が合ってしまい焦って目を逸らすと―――
「昨夜はすまなかった。知らない内に寝ちまって……世話掛けたな」なんて言うからドキッとしてワケの分かんないことを口走っていた。
「いえ……そんな……またいつでもどうぞ……」
私ったら、何言ってんだろう?そんなこと、これっぽっちも思ってないのに……
「そうか、じゃあ、スる時はまた頼むよ」
「なんで私が子守なんてしなきゃいけないのよ!まっぴらごめん!お断り!」
「はぁ?なんだそれ?」
完全に思考回路がブッ壊れてる。これ以上、陸さんと話してたら自分でも何を言い出すか分からない。
危機感を覚えた私は陸さんから逃げるように喫茶店を出て速足で駅に向かった。