もっと甘く   ささやいて
「人が気にしていることを、そんなにハッキリ言われるなんて、その方がショックです。」

「そのショックが二重にならないこと祈るよ。」

「村田さんって、何気にサディストですね。」

「あっはっは、ショックを受けるべきか?」

私は彼が私を大人の女性として扱ってくれないことをしっかりと噛みしめた。

「私だって、あと十年もすれば、成熟した女になれます。」

「あっはっは、楽しみにしておくべきか?」

「むぅ。」私はうなってみせた。

「あっはっは、今のキャラの方が君に合っていると思うが、無理して成熟しなくてもいいんじゃないか?」

「本当は私もそう思っています。」

私は運ばれてきたデザートのプレートがとても可愛らしく飾られていたので、その話題から頭がそれた。

「食べるのが勿体無いくらいですね?」と言いつつ、スプーンでケーキをすくって口へ運んだ。

ほろ苦いチョコレートケーキに舌が溶ろけた。

「このケーキ、最高。すごく幸せ。」私は食べるのに気を取られて村田さんを見ていなかった。

彼が優しげな眼差しで私を見つめていることに、私は全く気づいていなかった。

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