もっと甘く   ささやいて
「ジュデェスが君に無理な注文をしていると思っていたが、何もないようだな。デイビッドとは二度ほどやり取りしたが。」

「ジュデェスにはついていけません。私のペースを乱されたくないのです。」

「何かあったのか?」

「いえ、プライベートなことでちょっと。あちらでは公私を別にできても、こちらに帰ってくるとそうもいかないと思って不安です。」

「彼が何をしたのだい?」

「非公式で来ると言っていました。私、困ります。」

「彼にハッキリ言ったのだろう?」

「聞く耳持たずで。」

「彼のことだ。シリーズは完璧に仕上げるだろう。だが君を手に入れるのは別だ。人の心はそう簡単に左右できるものではない。来日してまで君にぞっこんとは恐れ入ったな。」

私は村田さんと話しをして少し落ち着けた。

編集者としての彼がそばにいる限りだ。

私のこれからの執筆人生に彼の存在は大きかった。

私の心の支え。そう思いながら彼と渡米した一週間が頭をよぎった。

「良かったら今夜食事に誘いたい。君の前途を祝って。予定はあるかな?」

「ありがとうございます。嬉しいです。」

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