もっと甘く   ささやいて
約束の時間に村田さんのオフィスへ出直した。

「掛けてて、もう一本電話を済ませるから。」

私は村田さんが好きだと思った。

好き以上かも。

彼は私の仕事上のパートナーだ、と自分勝手に決め込んだ。

編集者と作家の関係以上のものを彼に求めても、受け入れてもらえないとも思っていた。

「お待たせ、行こうか。」

村田さんと都内のあるレストランへ向かった。

「留仁、君の成功を祝って、乾杯!」

「ありがとうございます。」

「当分行ったり来たりで落ち着かないな?」

「いいえ、四週のうちの一週だけですから、前回の二週間は長かったです。」

「延長させたジュデェスのせいだな。私の大切な作家に勝手なことをされちゃ困る。」

村田さんが私のことをそう言ってくれたので私はとても嬉しかった。

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