もっと甘く ささやいて

「恋人が凍って帰ってきたらどんなにつらいかしら？ジュデェはそういう覚悟を考えないの？運良く生きて下山できても手足が重度の凍傷だったら一生抱いてもらえないのよ？私を絶望の谷底へ突き落とさないでほしいの。それでも登りたいなら、もう会わないわ。」

「ダメだ。来週からトレーニングに入るし、低い雪山からスタートするんだ。もう決めたことだ。」

「トレーニングはエベレストへ登るためのものね？どうして来る前に教えてくれなかったの？知っていたら会わなかったのに、どうして？」

「ルー、なぜだ？僕のどこがいけない？」

「ジュデェは完璧主義にこだわりすぎているわ。人間は１００％でなくてもいいのに。」

「１００％を追求して何が悪い？」

「悪いとは言っていないわ。あなたを否定しているわけではないの。ただ今よりもっと行きつ戻りつしてほしいの。上ばかりを目指さないで立ち止まったり振り返ったりしてほしいの。人間だからそれができるのよ。ジュデェが決めたことに私があなたにしてあげられることはもう何もないわ。わかってもらえる？」

「考えさせてほしい。君の言ったことをもう一度考えるよ。」

「ありがとう、ジュデェ。」