もっと甘く   ささやいて
午後は部屋にこもって休みたいと言う弘子さんを置いて、私は一人で街をぶらついた。

シアターの前で目に付いたジュデェスのポスターを眺めた。

相変わらずスターの座を突っ走っている彼を想像して通り過ぎた。

携帯が鳴った。

「ルー?ジェフだよ。今どこ?」

「シアターの前よ。」

「すぐ行くよ。向かいのカフェで待ってて。」

コーヒーを注文して通りに面した窓際のカウンター席に座り、ジェフを待った。

「ルー、ヒロはダウンした?」

「ジェフ、彼女に何をしたの?」

「僕はただ彼女の欲求に応えただけだよ。彼女の終わり無き欲情に僕の方が燃え尽きそうだった。あれ以上は続かないよ。彼女が先に気絶してくれて助かったくらいだ。」

「気絶するほどやったの?」

「仕方がないよ。ヒロが望んだことだ。」

「ジェフも彼女で満たされたでしょ?私とは違うと思うの。」

「僕はヒロでは満たされなかった。体は交えてもフィーリングが一致できなかったんだ。彼女とはこりごりだよ。僕に激しさを求めるだけのセックスはご免だ。」

「そうなの?」

「僕はルーとのセックスが好きだな。あの夜だけは忘れられない。」

ジェフは私の目を覗き込むように見つめた。

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