もっと甘く   ささやいて
次の週、村田さんからの呼び出しがあった。

「君のお陰で週末が潰れたよ。赤ペンを入れておいたから、あとで修正しなさい。」

「ありがとうございます。」

「君はこれをどうしたい?」

「初めはブログに載せるつもりで書いていました。でも書いている内に気づいたのです。私はキーボードを打つよりもペンを握っている方が好きだと。朝から晩まで一日中ノートに向かっていました。週に二~三本のペースで、中毒にかかったような一年半でした。今でも白い大学ノートを前にするとそこから動けなくなるんです。呪文を掛けられたようにページが文字で埋まっていくのです。ですからブログには載せなかったのです。」

「ブログか、まだ誰もが見るものではないな、もっと人の目に触れやすい場がいいな。」

村田さんはデスクの向こうで頬杖をつき、目を閉じた。

編集室は静かだった。

私は目を閉じた彼を見つめた。

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