もっと甘く   ささやいて
「留仁、ディナーを忘れちゃ困る。部屋から出て来なさい。下のロビーで待っている。」

村田さんはまるで本当に私のマネージャーのようだった。

「お待たせしてすみません。」

「時間を忘れてつい夢中で直していたんだろ?わかっている。」

「村田さん、デイビッドはシリーズのことで目を輝かせていたようですけど。」

「当然だ。彼の頭の中にある電卓は膨大な利益が入ると計算済みなのだろ?」

「そういうことなのね。」

「留仁、私は出版社で働くことが好きなのだ。君のマネージャーとしての仕事には何の魅力も感じない、悪いが。」

「私も村田さんのことが少しずつわかってきました。」

「どうわかったと言うのだ?」

「仕事に一途で真面目でちょっぴり古いタイプで、それから私の支えになってくれる頼れる味方なのです。」

「まだ四十前だ。古いとはどう古いのだ?」

「保守的って意味です。」

「ふん、当たっているかもしれない。」

「本当ですか?」

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