しっとりと   愛されて
β.交際の始まり
私は堺さんと食事に行った。

「乾杯!君にとっては少し強引だった?」

「はい。」

「素直だな、飲める?」

「少しでしたら。」本当はザルのように飲めた。

でも恥ずかしいので言えなかった。

飲んでも顔に出ない方だったので、酔ったふりをしなくてはと思っていた。

苦しい。

こんなことで先行きどうなるのか、不安だった。

「どうかした?」

「いえ。」

「考え事?」

「何でもありません。」

「そう、この後どうしたい?」

「この後ですか?」

「そう。」

「堺さんに決めていただいて構いません。」

「ふ~ん、そんな返事していいの?」

「えっ?」

私は彼の言ったことが飲み込めていなかった。

今後のことで頭がいっぱいで、食事の後どうするかなんて考えつかなかった。

おまけに、彼がどんどんグラスにワインを注ぎ続けるので、ついつい飲んでしまった自分に全然気づかないでいた。

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