しっとりと 愛されて

「辞めてどうするんだ？」

「こっちで就職するのよ。外資系でも日系でもいいわ。」

「百合乃、本気でそう考えているのか？」

「ええ、孝二さんはこんな私をどう思う？」

「坪井専務だったら喜ぶだろうな。」

「孝二さんは？」

「俺は先のことはわからない。２年後のことはわからない。帰国するかもしれないし、その時になってみないとね。」

「私だってわからないわ。ただ漠然とそう考えたりするだけよ。」

「出来ることなら、君をそばに置いておきたい。俺の願いだ。」

「今はそのひと言だけで充分よ。その言葉は１００回抱かれるよりも価値あるわ。」

「百合乃、すごい比較だな？君がそんなことを言うなんて信じられない。」

「こっちにいると考え方も変わるわ、いい方に。」

「参った。何もかも投げ捨てて君と二人で帰りたい。」

「マーケの３人もいつも同じことを言っているわ。そんなに東京が恋しいのかしら？」

「男は女と違うんだ。」

「香川女史と竹林秘書は私と同じ意見だったわ。２年経ったら辞めて二人ともこっちで暮らすそうよ。」

「何だって？」