しっとりと　　　愛されて
「おはよう、今日も早いね？」

「おはようございます。」

堺さんは今朝もスタバのコーヒーをすすっていた。

二人でエレベーターを待った。

私は昨夜遅くまでフィギュアの下半身を設計していたので寝不足だった。

エレベーター内がまたコーヒーの香りでいっぱいになった。

「ぁふっ。」私は思わずアクビをしてしまった。

「寝不足？昨夜は彼が寝かせてくれなかった？」

私は耳を疑った。

「ち、違います。」

「へぇ、否定するところが怪しいな。」

「そ、そんな、違います。」

「ちょっとからかっただけだ。彼氏いる？」

「いません。」

「ふ～ん、じゃ、俺が立候補しよう。返事を待っているよ、明日の朝、ここで。」

堺さんは私をエレベーターに残してスタスタと出て行った。

「あ、あの、ああ困ったわ、どうしよう。」

今日は一日中そのことで頭がいっぱいだった。

幸い専務は工場へ出張中だった。

< 8 / 60 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop