君のせい

家まで





ん?誰だ?



そのまま歩いていくと、はっきりと自転車にまたがっている男の顔が見えた。



吉井..........




ドキッとして思わず立ち止まってしまった。




意識、し過ぎている




そう思って、また普通を装って歩き出した。


でも、なんかぎこちない歩き方になってる気がする。


だんだんと吉井に近づくと、吉井は自転車から降りた。



そして、通り過ぎようとした時、



ぐっと腕を掴まれた。



「行くなよ」







腕を掴まれて振り向くと、まっすぐな瞳で私を見ている吉井がいた。




この、胸がくすぐったい感じは、


抑えようと抑えようとしているこの感情は、



ダメだ、気づいちゃダメだ。



腕を引っ張り返そうとしたら、


逆に引っ張られてしまい、




顔を上げたら間近に吉井の顔があって、


思わずぐっと下を向いた。






「ちょっ、その手を離せっ」




反対の手で吉井の腕を掴んで引き離そうとしたけど、

力が強くて離れない。



「やだ」




「や、やだって、あんた早く自転車こいでとっとと帰んなよ!」



「お前、電車?」


「はあ?」


「いいから教えろ」



「徒歩、ですが」



「お前んちまで送る」




「はっ、はああ??????」




もう一度顔を上げると、吉井は少し怒ったような顔で、


私を見下ろしていた。



「送らせろ」



「けっ、結構です」


吉井は、私の腕を離して自転車のスタンドを立てて止めた。



よし、諦めた。


ホッとしながら歩き出すと、後ろから背中のリュックを掴まれた。




「えっ」



振り向くと、自転車の前かごに入っていた白いエナメルバッグを斜め掛けした、

ちょっと不機嫌そうな顔の吉井がいて、


私の背中からリュックを奪い、


自転車の前かごに入れた。



「行くぞ」









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