君のせい
信号が青に変わり、また吉井が自転車を引いて歩き出した。
少し遅れて歩き出すと、吉井が振り向いて、
私が隣に行くと、また前を向いた。
「お礼を言われるようなこと、私何もしてない。
逆に謝ってきた。さっき宇崎さんに」
「さっき?」
「うん。私、ちょっと言い過ぎたかなって。
ごめんって、教室で彼氏待っている宇崎さんに謝ったんだ。
いい子だね、宇崎さんって。
噂で聞いてたのと、ちょっと違った。
いろいろ話できてよかったよ」
かわいいし、吉井が好きになるのもわかる。
そう思ったけど、それを吉井に言うのはやめた。
「ほんと、お前っていい奴だな」
いい奴.........
そっか。
吉井の好きな宇崎さんを、私はいい子だと言ったから、
吉井の好きな宇崎さんを、私はかばったから、
だから、吉井にとって私は【いい奴】なんだ。
そっか。
そういう意味だったのか。
バカだな、私。
何、勝手に勘違いして、勝手にドキドキして、
ほんと、バカ.........
「鈴と友達になってやってよ」