君のせい





「うちは無理なんだって。


当番とか、試合の車出しとか親ができないから」



航太はぐずぐずと泣き出した。



「俺このままじゃ、あいつらに抜かされる。


俺もバスケ強くなりてぇよ」




困ったなぁ......





その時、ダムダムダムとボールを地面につく音がして、


砂場の方を振り向くと、



吉井が航太のボールをその場でついていた。



公園の柵の外に、自転車が停めてあって、

その下に、吉井のエナメルバッグが置いてあった。




「航太、お前何年?」




吉井は、器用にボールをつきながら航太に聞いた。


そっか、吉井ってバスケ部か。



「2年」




航太は目をこすって、不貞腐れながら答えた。



「俺からボール奪ってシュートしてみろ」



「はあ?」



「小2だからって容赦しねぇぞ。俺は本気だからな」



「なんだよ!ぜってぇシュートしてやるからな!!」



「よし」



吉井は私のところにきて、ボールを下に置いた。



「吉井?」


私が吉井に話しかけると、



吉井は、制服のブレザーを脱いで、


私に差し出してきた。



「持ってろ」



ちょっ、小2に本気出すのかよ。


そっとブレザーを受け取ると、


吉井はワイシャツの袖を捲り、地面に置かれたボールをスッと拾うと、



ドリブルしながら航太に向かって走り出した。







< 26 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop