君のせい
吉井がバスケしているのを、初めて見た。
少し離れて、ブランコの周りを囲っている低い柵に腰掛け、
航太に本気を出している吉井を見つめていた。
違う、本気を出しているんじゃない。
本気を出しているように、見せかけているんだ。
必死になってボールに手を伸ばしている航太に、
時々ボールを取らせている。
優しいんだな........
公園の外灯の下、なんだか楽しそうだ。
最初ひねくれていた航太も、
だんだんと、吉井の優しさと、バスケのうまさに気づいて、
言うことを聞くようになっている。
こと細かく航太にバスケを教えてあげている吉井。
ボールの扱い方が、手慣れていて、
ドリブルする姿も、
シュートする姿も、
フォームがきれいでかっこよくて.........
ちゃんと航太に、しゃがんで目線を合わせて教えてあげている姿に、
もう、気持ちが抑えきれなくなって、
気づきたくない、気づいちゃいけないって、抑え込んでいた想いが、
あふれ出てきてしまった。
その時、航太がシュートした。
「やった!!兄ちゃんからシュートした!!」
吉井は、大喜びしている航太の頭を、
わしゃわしゃと撫でくりまわした。
「航太、すっげーじゃん!!」
航太は、吉井にぎゅっとしがみついた。
「航太。
毎日公園走って、さっき教えたドリブルとシュートの練習しろよ。
そんで、中学入ったらバスケ部に入れば大丈夫だ。
航太は、絶対に強くなる。
ミニバスの奴らなんかに負けねぇーよ」
お腹にしがみついている航太の頭をずっと撫でている吉井の表情が、
ものすごく優しくて........
くすぐったいと思っていた胸が、きゅんと音をたてた。