君のせい
吉井はブレザーを着ないでそのまま手に持ち、
ちょっと首を傾げて、上目で私の顔を覗き込んでいる。
綺麗な二重
きりっと上がった眉
目を合わせていられなくて、パッと横を向いて目をそらした。
「姉ちゃんは、いっつも暇だよ」
航太が私と吉井の間に入ってきて、私と吉井を交互に見上げて、
にやにやしながらそう言った。
「こ、航太!!うるさい!黙れ!」
まったく、余計なことを.......
「会えんの?」
「はっ?」
航太を睨みつけるのをやめて、ちらっと吉井を見たら、
吉井はすごく優しい目をして笑っていた。
「日曜、会えんの?」
「別に.....いいけど」
あぁぁぁ.......なんてかわいくない言い方だ。
でも、これって私と会うことが一番の目的なわけではなく、
航太とバスケすることが目的なわけであって、
私がこんなドキドキするようなことではない。
そうだ、私の気にしすぎ。
意識し過ぎだ。
「よし、じゃあ航太、日曜公園に1時な」
「やった!!ぜってぇだぞ!約束だからな!」
二人は勝手に約束して、公園から出て行き、
吉井は自転車のカゴに入っている私のリュックの上に、
自分のブレザーをバサッと無造作にのせた。
ちょっと、待て。
私も公園から出て行くと、吉井は地面に置いたバッグを斜め掛けして、
自転車のハンドルを持った。
カタンとスタンドが外れる音がして、
また家へと歩き出した。
航太は私たちの少し前を、
ボールをつきながら歩いている。
「吉井は、大丈夫だったの?」
まっすぐ前を歩く航太を見ながら、吉井に話しかけた。