君のせい
吉井は、カタンと自転車のスタンドを立てた。
「なんで、親父さん......」
歯科医院の看板を照らす灯りで、
吉井の切なげな表情がはっきりと見えた。
「なんでって.......突然だったんだ。
朝、心臓が止まってて。
ほんと、突然死んじゃった」
そう言って下を向いた。
あの日のこと、
あの朝の出来事は、
一生忘れられない。
吉井は自転車の前カゴにある自分のブレザーの下から、
私のリュックを取り出して、私に差し出してきた。
下を向いたままそっとリュックを受け取り、
背中に背負った。
「突然死ぬってさ……残された方も辛いけど、
本人はもっと、辛いよな」
吉井の言葉に、ハッとして顔を上げると、
吉井は苦しそうな顔で俯いていた。
「だから、俺たちがいつまでも引きずっていたらダメなんだ」
「俺たち?」
顔を上げた吉井の綺麗な顔が、また灯りに照らされた。
「お前の気持ち、わかるよ」
えっ.........
吉井は自転車のハンドルを持って、カタンとスタンドを外した。
「じゃあ、また明日な」
そう言って、自転車に乗って、
駅の方へと走って行ってしまった。