君のせい





そんな..........




胸がまたきゅーっとして、

くすぐったいどころか、苦しいぐらいだ。



「いい?」



そう言って私の顔を上目で覗き込んできた吉井。



下瞼が少し垂れ気味の大きな瞳。



だだをこねている時の航太みたいで、


ちょっとかわいいと思ってしまった。




「いっ..........いいっ」





ドキドキしながら、それだけ言うと、


吉井は、ははっとかわいく目を細めた。




長い睫毛


くしゃっと下がった目尻



その笑顔が、



屈託のないその笑顔が..........




私、もう...........





抑えきれない.............





吉井がまた歩き出して、

少し追いかけて隣を歩いた。




どうしてこんなにドキドキするようなこと言うんだよ。

勘違いしてもいいのかよ.........




「あぁ、お前の傘は明日返すから」



下を向いて歩いていたら、吉井が突然傘の話をし始めた。



「そんなの、いつでもいいよ」



ちらっと隣の吉井を見ると、

ははっと笑って、

傘を少し上げて、いつまでも晴れそうにない空を見上げた




「明日、晴れるといいな」







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