君のせい
公園にはまだ吉井はいなかった。
公園の地面がまだ少しぬかるんでいるせいか、
数人しか遊んでいる子がいない。
航太は水たまりをよけながらボールをついて、
ゴールに向かって投げている。
ボールは転がって水たまりに入り、結局ドロドロ。
そのドロドロのままガシッと掴むから、
航太の服もドロドロ。
あぁあ、吉井が来る前に泥んこだよ。
それでも楽しそうにボールを投げている航太を見て、
思わず笑ってしまっていたら、吉井が自転車に乗って公園の脇に現れた。
その姿を見て、また胸がきゅんとした。
自分の服ばかり気にしていたけど、
そっか、吉井も私服なのか..........
吉井は自転車を停めて、すぐに航太の元へ行き、
バスケをし始めた。
深緑色の、首元が立ち上がったパーカーの袖を捲って、
ダボッとしたキャメルのパンツを履いている吉井が、
ドロドロの航太を見て、
ドロドロのボールを掴んで、
あはははっと、爆笑した。
笑っている吉井の黒髪が、
いつもよりもふわふわっと盛られているのは、
気のせいだろうか。
いつもより、もっとかっこよく見えちゃうのは、
私の目がおかしいのだろうか。
吉井は笑いながら下を向いて、前髪を揺らすと、
私の方へと歩いてきた。
「すっげぇ、ドロドロなんだけど、ははっ」