君のせい





両手を私に見せて、くしゃっと笑っている吉井が、

だんだんと私に近づいてくるから、


思わず下を向いた。





「ごめん、汚れるよね。えっと......手洗う?

タオルタオル......」




「かわいいじゃん」




えっ、


今、なんて............




下したリュックを持って、びっくりして顔を上げた。




吉井はパンパンと両手をはたいて、まっすぐ私を見つめた。



「学校では絶対に髪下すなよ」



「えっ、なにそれ」




吉井は下を向いて笑うと、また顔を上げた。





「俺だけ知っていたいから。



他の男になんか、見せんな」





「にいちゃーん!!早くー!!」





ふっと笑って吉井はまた航太の元へと走って行った。





もう、だめだ。


どうしようもなく、胸が苦しくてリュックを抱え込んだ。




器用に軽々とドリブルする吉井も、



ぐっと手を伸ばしてシュートする吉井も、




しゃがみ込んで、航太の目線に合わせてバスケを教える優しい吉井も、




全部



全部




好きだ...............












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