君のせい
航太は首を傾げて、
吉井の方を向いた。
「兄ちゃんの名前って【しゅん】?」
「そうだよ」
「ふたご?」
「うん。そうだよ」
「すっげぇー」
航太はまたお母さんの広げたシャツを眺めた。
「トミカだ.......姉ちゃん、トミカの服だよ、すっげぇー」
航太は急いで泥んこの服を脱いで、
お母さんが持ってきた、紺地に赤い消防車の絵がプリントされたシャツに頭を入れた。
トミカのシャツを着て喜んでいる航太を見て、
お母さんが優しく微笑んだ。
でも、笑っているのに、どこか切なげで.........
「こんな頃もあったのね........」
そうつぶやいて、泥んこのシャツを持ってゆっくりと立ち上がった。
「あ、ありがとうございます!」
お礼を言って、お母さんの手にある航太のシャツを掴むと、
お母さんは首を振った。
「洗わせて。乾いたら瞬に持たせるから。
それでいい?」
え.........
「あの、えっと、じゃあ.........
私もお借りした服、洗って乾いたら吉井......くんに渡します」
お母さんは、ふっと笑った。
「そうして。
どうぞ、上がって」