君のせい






全部好き............




「わっ、私だって.......」





「ん?」






「吉井の全部が.......すっ、すっ........






好きだ」





言った。




言ってしまった。



顔面が爆発しそうなぐらい熱くなって、


両手で顔を覆って下を向いた。





「くくくくくくっ」






笑い声がして顔を上げると、


吉井の背中にいる航太が目を閉じながら笑いをこらえていた。





「こっ、航太!!起きてたのか!!くっそっ!!下りなさい!!!」





吉井はちらっと後ろを見てから、

ゆっくりとしゃがんで航太を下ろした。




航太は吉井の背中から下りると、転がった靴に足を突っ込んだ。




「姉ちゃんってさぁ......



なんかちょっと.........めんどくせー」





めっ、めんどくせーって、どういう意味だ!



「あとで覚えとけよ航太!」



リュックから家の鍵を出して、航太に渡すと、


へへっと笑って玄関に続く階段を上って行った。








玄関の扉がパタンと閉まると、また静かになって、


陽が沈んで薄暗い中、



吉井と二人きりになってしまった。









< 80 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop