君のせい
全部好き............
「わっ、私だって.......」
「ん?」
「吉井の全部が.......すっ、すっ........
好きだ」
言った。
言ってしまった。
顔面が爆発しそうなぐらい熱くなって、
両手で顔を覆って下を向いた。
「くくくくくくっ」
笑い声がして顔を上げると、
吉井の背中にいる航太が目を閉じながら笑いをこらえていた。
「こっ、航太!!起きてたのか!!くっそっ!!下りなさい!!!」
吉井はちらっと後ろを見てから、
ゆっくりとしゃがんで航太を下ろした。
航太は吉井の背中から下りると、転がった靴に足を突っ込んだ。
「姉ちゃんってさぁ......
なんかちょっと.........めんどくせー」
めっ、めんどくせーって、どういう意味だ!
「あとで覚えとけよ航太!」
リュックから家の鍵を出して、航太に渡すと、
へへっと笑って玄関に続く階段を上って行った。
玄関の扉がパタンと閉まると、また静かになって、
陽が沈んで薄暗い中、
吉井と二人きりになってしまった。