Eternal Silence
「勇人、ケアセンターの完成って
今週だった?」
「確か……お養父さん、
そう言ってた気がするけど……」
そう言って、総合病院の隣に立つ、
柔らかい色合いの建物を見つめる。
「ケアセンター?
何、ここの病院……
また新しい施設、作ってんのか」
走るスピードを落として、
わざとアイツらと会話できるように並ぶ。
「はいっ。
神前悧羅グループからの要請と援助があって
ようやく成り立つんですけどね。
父の想いが、いっぱい詰まった空間が出来るんです」
そう言った千尋君は、
まっすぐにその施設を見つめる。
「『心のケア・ターミナルケア』を中心にしていく
医療空間。
医療者の都合ではなく、患者さんの為に必要な空間を
提供していきたい。
お養父さんは、そう言ってました」
その言葉に……
雄矢先生らしさを感じた。
あの人の器は、
デカくて……オレにとっては
偉大すぎる背中。
親父を早くに亡くしたオレにとっては、
雄矢先生の背中が、
親父の背中にも似て。
アイツらとジョギングを済ませて、
自宅に戻ると、
オンコール勤務の呼び出しを終えた院長が
成元御大と共に、
朝食をとっているところだった。
「ただいま、戻りました」
「帰りました」
「ただいま」
三人それぞれに玄関で声を出すと、
洗面所に雪崩れ込んで、
手洗いとうがいを済ませる。
そのままダイニングに流れ込んで
朝食。
「「お帰りなさい」」
オレたち三人を迎え入れたのは、
院長夫人と、水谷さん。
ランチョンマットの上に並べられたのは、
籠に盛られた
ミニフランスパン。
そしてサラダ。
真っ白な皿に美しく盛られた
サラダの傍には、
何かを描いたように
ドレッシングが添えられている。
生ハムで演出された、
薔薇の花びら。
コーンポータジュ。