Eternal Silence




ヨーグルトには、
フルーツがたっぷりと入っている。



そして最後は紅茶。







相変わらず……
上品に並べられた朝食。




オレが育ってきた
朝食とは無縁の朝だったけど
それでもこの中に、
院長夫人の愛情は感じられるわけで。








「嵩継君。

 これは……貴方のお弁当。

 井津君の味とは程遠いだろうし、
 貴方のお母様の味とも程遠いけど
 食べたかったんでしょ」





そうやって目の前、
姿をみせた弁当箱には
海斗にリクエストした
『鮭の塩焼き』。




「おっ、塩焼きじゃん」




思わず、弁当箱におさまった
焼き鮭を手でちぎり取ると
口の中に放り込んだ。





「まぁっ、嵩継君」




何時の間にか見られていた
オレの行動に、部屋の中から
柔らかな笑い声があがる。



「水谷さん……旨いです。

 後は、昼に頂きます」


「良かったぁ~。

 嵩継君の好きなもの、
 リズさんにも
 私がレシピを伝授しておくわね」




この場所に来て、
取り戻した大切なもの。



人と人の繋がり。
温もり。






「ごちそうさまでした」




ゆっくりと合掌して、
食器を片づけるために立ち上がった
オレを院長の声が呼びとめた。




大学がある勇人と千尋は
すでにダイニングを出て、
出掛ける準備を始めた。





オレの目の前に置かれたのは、
小さな小さな、骨壺。




「院長、成元先生……」




思わずその骨壺を手に取る。




「井津君の切断した足の骨だ」




鷹宮には、その施設がない為
患者さんの希望で、
冷凍保存や火葬処理を委託して行う。


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