Eternal Silence
「海斗に渡しときます」
その小さな骨壺を
木の箱にいれて、
ゆっくりと布で包む。
「嵩継、明日うちの病院にケアセンターが
完成する。
実際に受け入れを始めるのは、
年度が切り替わってからになるだろうが、
その前に……
井津君に過ごして貰わないか?」
突然切り出された言葉に、
現実問題が付きつけられる。
海斗の治療は始まった。
始まったとは言え、
それが……進行を遅らせるものであって、
完治させるものではないことを
カルテに映し出される数値の悪化が
告げているのも確かで。
「四月から当病院には、
ケアセンターを設置する。
成元とも話した。
親友である多久馬総合病院の院長をしている
恭也とも話したんだ。
恭也の病院は、
利益を追求することしかできない。
病院経営も慈善事業ではない。
だから……利益を追求することが悪いことだとは思わない。
だがそれに犠牲になるは、
いつも弱者の患者たちだろう。
病院側の利益の都合で転院を余儀なくされるも、
次の転院先が受け入れるてくれるのは、
一か月後なんて実際問題ざらだ。
そんな弱者の心を守る居場所。
空間を提供できたらと思った。
交通事故でなくなった西宮寺勇生。
私と恭也の親友が目指した医療の夢でもあった」
確かに……
そんな空間があれば、
理想に近い医療が提供できるかもしれない。
「恭也の病院と、神前悧羅との提携により
ケアセンターの業務において、
心をケアする専門家も手配した。
鷹宮においても、勇人の卒業を待って
精神科を設立する。
これからも医療に欠かせない
ケアセンターを、嵩継にも手伝ってほしい。
今の病院業務と並行してだがな」
そんな院長の熱い思いを聞き届けて、
オレはいつものように出勤準備をした。