Eternal Silence






鷹宮邸を出て、
医局に弁当を置いた後、
向かった先は、海斗の病室。






朝の検温に起きていた海斗は
食欲がないながらも、
朝食を少しずつ口に運んでいた。





「ちーす」




顔を出すと海斗は不満気に
オレに病院の食事がマズイだの、
食べ物の入った食器が、
食欲を落とすだの
文句ばっかりいいやがる。





アイツが食事を終えたのを見計らって
食器を下げると、
紙袋にいれて持ってきた
小さな骨壺を取り出す。




「嵩継……これは?」

「切断したお前の足」






小さく告げたオレに、
海斗は黙って両手を伸ばした。






脊椎損傷により麻痺した下半身。




そしてその麻痺した下半身も、
今は片足が、
手術により切断されている海斗。





「ありがと。

 コイツの最期、見届けてくれたんだろ。
 お前と一緒にグランドを駆け抜けた
 俺の相棒……。

 お疲れさん……だな……」





そうやって紡ぐと、
アイツは無理に笑顔を浮かべた。




「母さんが来た時に預けとかないとな。

 何時か……俺にその時が来た時、
 こいつも一緒に入れて貰って
 俺はもう一度、走ってみせるから」




そう言うと、アイツは
骨壺を紙袋に戻して、
ベッドサイドの引き出しに片づけるように
オレに言った。

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